第2話「プリン事件」
ワクワク系マーティングの話をする上で絶対にはずせない話がある。
それが「プリン事件」だ。
サトシ:「タケシ、これからワクワク系業界ではあまりにも有名な『プリン事件』の話をする。最初に言っておくけどこの話は実話だ。過疎地といっても過言ではない廃業まで考えていたスーパーが普通のプリンを月1000個売り、日本1そのプリンを売ったお店になった。そのお店はこの事件をきっかけに今や過去最高の売り上げを上げるまでになっている。」
タケシ:「そんな夢のような話が・・・」
サトシ:「今からその話をドキュメント風につづっていくぜ。」
ある日のこと、店主は黄金比率プリンという商品名のプリンを4個発注した。
しかし、発注ミスだったのだろう、納品されてきたのはなんと96個だった。
普段のこの商品の売れ行きは月間20個~多くても50個
普通に考えたらとてもじゃないが売り切れる数ではない。
かといって返品するわけにもいかず、しかも賞味期限は10日間。
ここで店主は廃棄しかないなぁではなく、売り切るしかないと考えた。
店主は、なんにしてもプリンを買うための動機付けを行おうと計画した。
そこでまず、来店したお客さんに「おいしいプリンが入荷してますよ!」などと直接店頭で声をかけてみた。
すると1日で50個も売れ、食べた人のリピート買いもあり、なんと2日で完売してしまっ
た。
食べた方々口々に「あれはおいしかった!」というのを聞いた店主はこれはいけると考え、前回の1.5倍、144個の追加注文を行い、さらに徹底的に動機づけをすることにした。
そしてまずは入荷日のチラシにこのプリンのことを書いた。といってもよくある価格請求ではない。チラシの一角に商品名と合わせて、「○○さ~ん、あのプリンだよ。試食した人全員がうまいと言いました」と書いたのだ。
さらに店の入り口、陳列棚、レジに様々なPOPを掲示した。
これらの活動が功を奏し、二回目の仕入れもまた2日間で完売。
総計240個を売り切ったのだ。
そこで店主はさらに考えた。これはやればやるほど売れるのではないかと。
この後は床POPを追加した状態で3か月続けた。その結果月平均500個というペースに落ち着いてきた。ここまでの動機付けではここが限界のようだった。月500個でも今までの売れ行きを考えればすさまじい数だったが彼はこれを限界だとは捉えなかった。
超えていくにはどうすればよいのだろうか?と考え、彼は販売目標を2倍の月1000個に設定した。
店主はまず、店頭に看板を設置してアピールを追加した。その効果はあり、月の販売数は685個と再び伸び始めた。
そして次は、今までと少しやり方を変えて、プリンの話をまとめたチラシを作成し配布を始めた。
これが効果抜群だった。
このチラシを配布した月には874個売れ、その翌月にレジのPOPを目立つように変更するとこれもまた効果があり、月の販売数は1181個。ついに1000個を超えた。その翌月は新たな動機づけは行わなかったが月の販売数は1031個。連続で1000個超えを達成した。
こうして黄金比率プリンは1000個売れる商品となった。
1つのプリンがこんなに売れてしまうと他のデザートが売れなくなりそうな気がするが実際はそうではない。この店では他の商品も前年を上回る数量が売れている。
この事件をきっかけに店主は売りたい商品には動機づけを行うようになり、結果店の売り上げは伸びていった。
タケシ:「本当にこんなことが・・・さらなる動機づけをしたチラシの内容が気になる!」
サトシ:「それも原文そのままで教えよう。」
色々話を聞いていくうちにこのプリンがなんでこんなにおいしいのかがわかったんです!
実はこのプリンを開発した人はTVチャンピオンのプリン王だったんです!
数年前、当時まだ高校生だったプリン好きの女の子が、その番組でプリン王の座に輝いたんですって。その後その子が森永乳牛に入社してきたというのです。でも最初から商品開発部に配属されたわけではなく、最近になってようやく念願かなってプリンの担当開発になれたんですって。(よかったですねぇ~)
で、その子がすべてを注いで開発したプリンがこの「黄金比率プリン」(当店では別名あのプリン♪)なんです。
プリン王が作ったんだからそりゃあおいしいわけです。(ガッテン!)
でもありがたいですよね。
だって考えてもみてください!テレビ番組のプリン対決で一番になった人のプリンなんて普通食べれませんからね。
よくテレビで美味しいものを紹介してますけど、私たちの口に入ることなんて無いですもんね。いつも「あ~おいしそうだなぁ~。芸能人ていいなぁ~。」と言って指をくわえて見ているだけ。でもこのプリンだけは、森永乳牛さんとプリン王のおかげで私たち庶民も食べれるんですから。
ありがとう!プリン王!
ありがとう!森永乳牛!って感じですよね。(笑)
タケシ:「これはプリンがたべたくなる・・・こういうことならうちでもできそうだ!」
サトシ:「だろう?でもな、早合点してまったく同じことをしてもダメなんだ。ポイントはあくまでも3つのキーアクション、購買行動デザイン、キー・ビヘイビアの発見、そして感性情報デザインだ。こいつらについてはこれから教えていくぜ」
タケシ:「ありがとうサトシ、希望の光が見えてきたよ。」
はなしを聞いてやる気をだしたタケシ。それを見たサトシはこの店をつぶしたくないという気持ちがよりいっそう大きくなるのを感じた。と、その時、店の扉が開きある人物がはいってきた。
ガラガラ~
サトシ・タケシ:「いらっしゃいま・・・(さえぎられる)」
?:「ハーハッハ、懐かしい声が聞こえると思ったらやはりサトシ、おまえか。相変わらずめでたい幼稚なおつむだなぁ。」
サトシ:「なんだとぉ?お・おまえは!?」
これから頑張ろうと思い立った二人の目の前に現れた謎の人物、こいつの正体とは・・・
To be continued・・・
(次回予告)
サトシはタケシにものを売っていくには2つの道があると語る。どちらを選ぶのかは自分しだい。タケシはどちらを選ぶのだろう・・・次回、「2つの商いの道」こうご期待
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参考文献
出版社:角川書店
題名:「買いたい!」のスイッチを押す方法
著者:小阪裕司
DVD:ワクワク系マーケティング(作者は上と同じ)